还是那本官方设定集……想给阿蔷蔷看看这篇于是打了(。
……我觉得这篇真心好虐啊……(……
Short Story of Dist
from TALES OF THE ABYSS CHARACTER EPISODE BIBLE
author:実弥島 巧
「さようなら、サフィール」
冷徹な声と冷徹な瞳。
ディストは思わず手を伸ばして叫んでいた。
「待ってよ、ジェイド!!」
叫んだその声に、自身で驚き目が覚める。
目が覚め、夢だったのだと気づき、安堵したところで、ディストは自分が泣いていたことに気づいた。
(……またあの夢を見たんですね……)
ディストは涙をぬぐってベッドから起きあがる。
ジェイドを追いかける夢は数限りなく見ているが、泣きながら目覚めるのはいつもこの夢だ。ジェイドがこれ以上なく冷たい顔で、ディストに別れを告げる夢。
まだディストがマルクト軍に所属していた頃、ジェイドは1日の終わりにディストと別れるとき、いつも「では失礼」か「ごきげんよう」と告げていた。もっと幼い頃は無視をされたり、せいぜい声をかけられても「それじゃあ」ぐらいだったから、親しくなれたと喜んでいたものだ。それがあのとき——ジェイドと決定的に袂を分かつことになったあのときには、今まで見たこともないほど冷たい顔で「さようなら」とげられたのだ。
ジェイドは自分を切り捨てたのだと、ディストはすぐ察することができた。
まだサフィールと名乗っていた頃、彼にとってジェイドは神にも等しい存在だった。自分と同じ歳でありながら、何をやらせても天才的な才能を発揮したジェイドに、ディストは自然と傾倒し、同じようにありたいと努力し続けた。だからジェイドがマルクト軍の士官学校へ入学したと聞いたとき、ディストは一も二もなく後を追いかけることに決めたのだ。
そして卒業後には、ジェイドと共にある研究を行うことを命じられた。それこそがフォミクリー——レプリカを作り出すという技術である。ジェイドとディストは、この研究を完成させるために軍に入隊したといっても過言ではなかった。
それなのに——。
「それなのに、研究をやめるの!?」
「ええ。フォミクリーは禁忌として封印します。こんなことをしてもネビリム先生は生き返らない。分かっていたはずだったのですが、今まで私はそれを認められなかった。無駄なことをしてしまいました」
淡々とジェイドが言葉を紡ぐ。いつも通り冷静なその姿は、まるで朝食の卵の調理方法を決めたような口調だった。
「無駄じゃない!ネビリム先生は生き返るんだ!ジェイドならできるよ。僕も協力するから」
サフィールはあわててジェイドを止めようとした。止めなければ、全てが崩壊してしまう。
「しなくて結構です。もう決めました」
とりつく島もないとはこういうことだろう。
前々からおかしいとは思っていたのだ。ジェイドがピオニーからの手紙を見たり、何かの折に里帰りして、そこでピオニーと面会した時には、必ず物憂げな顔で考え込み、研究をおろそかにしていた。今思えばピオニーが——あの幼なじみ面した腹立たしい皇帝の息子が、ジェイドにフォミクリーをやめるよう勧めいたのだろう。
「……ピオニーだな。あいつがやめろって言ったんだろ。」
「私が自分で決めたことです」
「嘘だ!僕の知ってるジェイドはそんなこと言わない!」
「あなたが私の何を知っているというんですか」
「……う……」
「私は自分の決断を、他人にかぶせるような生き方をするつもりはありません。ネビリム先生は、私が殺しました。」
幼い頃の秘密をジェイドが平然と口にした。
これはジェイドのフォミクリーに対する決別の儀式なのだろう。止めなくてはいけない、とサフィールは考えた。ジェイドは普通の状態ではないのだ。幼い頃の憧れの存在だったネビリムが死んでから、ジェイドはずっとおかしかった。何かとは言えないが変わってしまったのだ。だからこそサフィールはネビリムを生き返らせようと考えた。サフィールもネビリムのことは好きだったし、ジェイドもネビリムが生き返れば、昔のジェイドに戻ってくれると思ったのだ。
「……やめてよ、ジェイド」
「そしてその過ちを認めたくないばかりに、死者をよみがえらせる研究に没頭した」
サフィールの言葉など意に介さず、ジェイドが続ける。
「……やめてったら……」
「ですが、それは無駄だと判断したのです。死者はよみがえらない。当たり前の現実だ。だから——」
「やめろぉっ!」
サフィールは生まれて初めてジェイドに逆らった。逆らって、胸ぐらをつがみ、壁に押しつける。かなり強く壁に体を打ち付けたであろうジェイドは、それでも顔色1つ変えず、言葉を結んだ。
「……私は私の意志でフォミクリーを封印します」
その瞬間、サフィールは両手から力が抜けるのを感じていた。
壊れていく。何もかも。
せっかく縮まったジェイドとの距離が、一気に離れていくのがサフィールにも解った。
いや、縮んだと思っていたのは幻想だったのかもしれない。
「僕は認めない……。僕1人でも研究を続ける」
「やめさせます」
「嫌だ!ネビリム先生が死んでからジェイドは変わっちゃったよ!ホントに笑わなくなったし、ホントに怒らなくなったし、ホントのこと何も言ってくれなくなった!ネビリム先生が生き返ってくれたら、ジェイドは元のジェイドに戻る!」
「……サフィール。私は元には戻りません。人は変わる。それだけのことです」
「違う!わかんないけどジェイドは苦しんでるんだよ。僕が助けるんだ!ジェイドの親友の僕が」
「誰が親友ですか、誰が……」
「とにかく!僕は認めない!」
「どうしても?」
「どうしても!」
その瞬間、ジェイドはサフィールを切り捨てた。
ディストは夢の記憶をかき消すように大きく首を振った。
今のジェイドはディストが憧れていたジェイドではない。
そして今のディストも、ただジェイドの後を追いかけていたサフィールではないのだ。
(……もうすぐフォミクリーが完成します。そうすればジェイドも考えを改めてくれるでしょう)
ジェイドが元に戻れば、「さようなら」というあの言葉を撤回してくれるだろう。その時こそ、懐かしい時代が戻ってくる。ジェイドがいて、ジェイドの妹のネフリーがいて、恩師のネビリムがいて、自分がいる。
(ついでにピオニーを入れてやってもいいでしょう。私は心が広いですから)
その夢を実現するために、今日もディストの1日が始まるのだ。
おわり